◎理事長よりご挨拶
住民による住民のための日本健康福祉政策学会へ発展を!
山口忍(茨城県立医療大学)
この度,日本健康福祉政策学会の理事長に就任いたしました茨城県立医療大学保健医療学部看護学科の山口忍です.1997年に本学会は開設され,初代理事長は新井宏朋氏が務められ,二代目理事長塩飽邦憲氏は2005年から2023年までの18年間という長い期間を担っておられました.長年,塩飽理事長が創ってこられた本学会を継ぐのは私にとっては大変な重責ですし,大きな決断でした.「理性は羅針盤,しかし情熱は強い風」というAlexander Popeの言葉を教えてくださった塩飽邦憲理事長は,本学会の開設前の準備室から学会員として関わり,グローバルかつ理論的な展開をしてこられました.
本学会は、いつの時でも当事者を真ん中に据え、寄り添い、人としての尊厳を大切にしています.私は、本学会で育てられました。「政策は厚労省が創るのではありません.住民がつくるものです」と西本美和理事の言葉に感銘を受け、「自治体の地域づくりの研修で自分の意見を言った際,それを聞いてくれる学会員がいることを知って自分が意見を言っていいんだとわかってうれしかった」と発言した学会員の言葉に、やはりそうなんだと感動し「政策の専門家は住民」ということを本学会の活動から体感しました。皆さまにもこのような体感を本学会で経験してほしいと思います。
そして今,人々を対象とするポピュレーションアプローチよりハイリスクアプローチが求められる時代に変化しています.児童虐待の増加や,医療費軽減のための重症化予防が背景にあります.もちろん,それは重要なことですが,予防の視点と生活モデルの視点で考えた時に,住民が住民の手で作る地域づくりは大変重要です.またCOVID-19の感染拡大は大きな変化を社会にもたらし,人々との関係づくりにも大きく影響しました.そのような新しい社会の動きの中で本学会ができることを提案していきたいと思います.人の暮らしの中にある「不公平」「理不尽」をなくし健康格差が生じないような政策提言に向けた学会活動が展開できることを目指したいと考えています。
本学会の良さを生かしてできることは,「当事者を中心に据え政策を考え提案すること」でしょう.そのためには私たちがもっと住民の近くにいることが大事です.住民の中で起こっていることを詳(つまび)らかに本学会で報告し,高所大所から今何が起こっているのか,グローバルな社会背景を含めて考え,何が大切かを一緒に考えその中で,政策に挙げることがあったら惜しみない提案をしていきましょう.
小規模な学会組織だからできることを強みにして,会員同士がどこかで接点を持つ機会を体制として組めたら,地域性を活かしながらも全国スタンダードな政策にも繋がっていくのではと期待します.本学会の理念の継続に理事長として微力ですが尽力していきたいと考えております。この図は、初代新井理事長が作成され今にも通じる図です。今後も皆様の闊達なご参加を期待しています。
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