- 【学会の性格】
本学会では,様々な健康福祉の課題の中から重要と考えられる事柄を取り出して,学術大会のメインテーマとしています.また,それを取り出す作業を行うときには,学術大会を開催する地域の市民・行政職員・専門職・研究者が集い,日常生活や職業生活の中で感じている問題について自由に話し合う,というプロセスを重視しています.その理由は,学会の趣旨である「地方分権を担える地域づくり」を進めるときにも,そうした民主的なプロセスが重要になるからです.
【準備の経過】
東京での学術大会の開催は,6年ぶりです.今回は,杏林大学の教員4名で作った市民参加をテーマとする勉強会を起点として準備を進めました.これまで5回の勉強会を開きましたが,そこに,市民参加に関心をもつ市民,実際に保健福祉活動を展開している市民・行政職員・専門職,そして関東地区の会員に来て頂いて,各地の活動について話し合い,お互いのつながりを深めてきました.勉強会のタイトル(地域名)を挙げると,市民参加条例づくり(国立市),愛隣舎の歩み(日野市),しんやまの家の歩み(中野区),子どもの保健・医療・福祉の連携(三鷹市),健康な町づくり運動(世田谷区)などでした.そのほか,関東地区の会員による集まりを勉強会と平行して2回開いて,学術大会への期待について話し合いました.そして,この二つの流れを集めた形で準備会を開き,そこで学術大会のメインテーマについて話し合いました.
【取り出された課題】
現在,子ども,高齢者,当事者などの健康・安全・幸せを守るためには,様々な地域資源のネットワークが,さらに充実される必要があると考えられています.しかし,有用な継続性のあるネットワークはどうしたら作れるのでしょうか.準備会に参加した人々が直面する大きな問題は,このようにまとめることができると思います.勉強会で取り上げた事例は,いずれも高い評価を得ている活動ですが,その継続と拡大については,それぞれ課題がありました.また,新たにネットワークづくりをしたいと考えている人々は,実行可能な最初の一歩は何だろうか,という悩みをもっていました.準備会に至る過程で,たくさんの初対面がありました.また,それぞれの立場や具体的な関心事項は,様々でした.しかし,初対面であることや立場の違いなどを越えて,健康福祉を支えるネットワークについてもっと広く深く考えたい,という思いは共通でした.
【メインテーマ】
以上を受けて,今回のメインテーマは,「こころでつながる健康福祉のネットワーク」,としました.もちろん,こころだけでネットワークが成立するとは考えていませんが,人々の思いやこころは,特にネットワークの確立時には不可欠なものであると感じられます.しかし,それは一体何でしょうか.また,それ以外の大事な要素には何があるでしょうか.学術大会では,多くの経験や実例をもち寄って,これからの健康福祉のネットワークについて,大いに語り合い,議論を深めたいと思います.ネットワークの過程には種々の段階(地域の問題に取り組む最初の段階,中間的な段階,継続した活動をさらに発展させる段階,挫折を乗り越える段階など)があって,それぞれに課題があると考えられます.また,ネットワークに関する根本的な問題提起も必要です.壁新聞やワークショップを手段として,ネットワークをめぐる様々な話題を取り上げて頂ければ幸いです.